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広田修の書評とエッセイ

エミネ・セヴギ・エヅダマ『母の舌』(白水社)

 本作は、政治的混乱から免れるためトルコからドイツへと移住してきた女性を主人公としている。この移民の問題は実に複雑な問題系を形成しているのだということが本書を読むと分かる。文化や言語やアイデンティティや宗教など、移民をめぐる問題は多種多様だ。その混乱をありのまま表出するということ。そこに本作の意義がある。

 本作はブロークンなドイツ語で書かれているとのことだ。ドイツ語の文法的な誤りなどがありつつも、それこそが魅力となっている小説である。その、言語表出がブロークンであるところに、移民の持つ混乱、多様な問題系が表出されているようで、とても興味深く読んだ。とにかく鮮烈な読後感だった。