本書はシリア危機下の紛争状況における一人の若い娘の不自由な生活を実際の出来事をもとに小説にしたものである。本書は、紛争や戦争というものが、いかに人工的に自然的な自由を抑圧するかについて書いている。紛争や戦争はまったき人工物であるが、それが人間の自然で自由な生活を妨げ、人間を殺戮したり、人間を狭い場所に閉じ込めたりする。その過酷さを書いている。
娘は歩き続けるという奇癖を持っているが、それこそが人間が生まれながらにもっている自然的な自由の象徴であり、それが限りなく抑圧される状況を描くことが、戦争の人工物としての残酷さを際立たせている。プロットもスーパーボールが跳びはねるかのような飛躍を伴い、読んでいて面白い。