洞口の本作は、些細で目立たないものに花を持たせるという善意に満ちた詩集だ。それこそ、一滴の水滴という地味で目立たないものが小鳥という華やかなものになるように。日常で感じる些末なことに、一つ一つ丁寧に花を咲かせる。詩とはこのように、目立たないもの、埋もれたものに祝福を与える善意に満ちた営為なのだ。
世界はただ行き過ぎていくには豊饒すぎる。その豊饒さを詩人は一つ一つ拾い上げていく。普通に過ごしていれば何ともない光景かもしれないが、そこに祝福を与えることでその豊饒さが明らかになる。日常の隠された豊饒さを暴いて祝福を与えるという意味で、本作は極めて世界に対する善意と好意に満ちた素晴らしい詩集である。