四元の本作は、詩に使われやすい言葉を圧倒的に排している。代わりに、四元は社会的な言葉や政治的な言葉をふんだんに使っている。詩として読もうとすると初め拒まれるような感じがするが、読み終わってみると非常な感動を覚えた。現実の異化の仕方には様々な方法があり、詩の異化の方法として、社会的・政治的観点からの記述というものがありうるということを如実に示す問題作だ。
社会的・政治的記述は、一見「単調にぼたぼたと、がさつで粗暴に」降ってくるように思われるが、その単調さを上回るような独自の異化作用があり、それをうまく利用している。なかでも「Je suis 女」は名作だと思った。こんなに政治的な訴求力を持ちながら詩としても成功している作品は珍しい。とにかくご一読をお薦めしたい。