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広田修の書評とエッセイ

長田典子『ニューヨーク・ディグ・ダグ』(思潮社)

 本作は、アメリカへ語学留学した経験をもとに、異なる言語による詩作の試みやアメリカで得た心象の描写を行っている。語学留学した経験は、詩を書く言語自体を変えるほどの大きな経験だった。詩の表現方法を変える出来事だったわけである。

 だが、このように体験が詩の表現方法を変えるという事態は、詩人には毎日のように起こっているのではないだろうか。確かに、長田のケースはドラスティックだけれども、詩人は日々新たな経験を積み重ねることにより、詩の表現が少しずつ変わっていく。詩を書く言語自体が変わるほどの大きな変化はなくとも、体験をするということは物の見方や考え方、表現方法が少しずつ変わるということだと思う。

 長田の本作は、詩人が日々少しずつ変化していくという意外と気づかれない事実を、体験による大きな変化を提示することで、白日の下にさらしたのではないか。