albatros blog

広田修の書評とエッセイ

水出みどり『夜更けわたしはわたしのなかを降りていく』(思潮社)

 本作では、父母の死が自らの生命の熾火となっているさまがまざまざと見て取れる。いわば、生と死との相関関係のようなものが主題となっている。死する他者が自らの生の根源となって、また血潮となって自らの身体をめぐり、生と死とが切っても切れない関係になっていることがうかがわれる。

 生きているということは、その前提に無数の死者の存在を据えていて、さらに自らもいずれは死者の群れに加わり、未来の生者の礎となっていく。生きるということは常に誰かの死を内包していて、その生と死の相関関係の下で見ると自らの人生というものを新しい視点から見ることができるようになるだろう。

 鮮烈なイメージの展開が小気味よい詩集だった。