albatros blog

広田修の書評とエッセイ

藤井晴美『never』(七月堂)

 藤井晴美の詩は、ギャグ詩と言ってもいいかもしれない。ハチャメチャでユーモアがあるギャグ詩である。だが、ギャグマンガにも高度なアイディアと技術が必要なように、藤井の詩にも高度なアイディアと技術が反映されている。藤井はギャグを演じている。これは一種の詩芸であって、芸事であるから当然演技が必要だし熟練が必要だ。

 藤井の詩からは、ギャグ詩としての詩芸の熟達を感じる。それは、読者を楽しませるために演じられた高度なアイディアと技術の結晶である。このような、詩を芸事に近づけているような詩人というものも少ない。詩は表現だったり創作だったりするからだ。藤井は詩が表現であったり創作であったりすることは否定するだろう。ここに、詩の新しい次元がある。