albatros blog

広田修の書評とエッセイ

絲山秋子『御社のチャラ男』

 

 日本の会社組織を風刺した作品である。舞台となるのは典型的なブラック企業である。といっても、そこで働く人間の苦しみを描くというより、ひたすらそこで働く人間や会社の仕組みの滑稽さを書き綴っている。経営の才覚のない社長、人の弱みに付け込むだけで無能な部長、主体性を持たない部下たち。この会社はいつも人員不足で組織としてめちゃくちゃであり、ついに不祥事が発覚してしまう。

 ここまでではなくても、日本の会社組織というのは多かれ少なかれこのような滑稽さを持っているのであり、それを痛烈に風刺する筆力はなかなかのものである。もちろん舞台となる会社でもきちんとなされていることはあるだろう。だがそういう点にはほとんど触れず、とにかく会社組織の滑稽さを執拗に描く抱腹絶倒の物語だ。だがこれは一種のホラーでもあるな、と感じた。人々が生活の資を得ている活躍の舞台である会社組織がここまで腐敗しているとなるととても恐ろしいことだ。現代社会にまつわるホラー作品かもしれない。