albatros blog

広田修の書評とエッセイ

2018年に見た映画

 2019年に見た映画を整理しようとしたら、2018年に見た映画がまだ未整理でした。とりあえず2018年から。

 

フェリーニ『道』

とてもよくできた映画だった。キャラクターの配置、ストーリーの流れ、必然的に感動を迫るラスト。性格劇として古典的ながら一流だと思いました。

・ジュゼッペ・デ・サンティス『にがい米』

イタリアの田植え出稼ぎを舞台とした女の闘い的要素の強いドラマ。社会派に徹していず、むしろメロドラマとして作られているのだろう。女を翻弄する悪党と、その悪党に人生を狂わされた女の間の復讐劇が基本。

・アントニオーニ『砂丘

ロックの世界観や衝動をそのまま映画化したかのような作品。ロックをさらに根底まで掘り下げ、ストーリー化し映像化した圧倒的な作品だと思う。

ジョン・スタージェス老人と海

漁、カジキとの戦い、サメとの戦いはそのまま人生の比喩になっている。どこまでも深い寓意が込められた作品だ。単純でありながら骨格がしっかりしており、普遍的な作品だ。

斎藤武市愛と死をみつめて

泣くしかない物語。ここまでくるともはや暴力的ですらある。だがここまで死というものを突き付けられると、己の死にまで思いが及び、とても俯瞰的な気持ちになる。吉永小百合めっちゃ美人。

アピチャッポン・ウィーラセタクン『世紀の光』

何とも淡いストーリーが変奏される。色彩がとてもまぶしく、音響が澄んでいる。意味ではなく間違いなく映像を語っている映画。爽やかな後味。

リチャード・アッテンボローガンジー

映像で見ると、ガンジーの生きた時代が暴力であふれていたことが実感としてわかる。ガンジーがなぜ非暴力を訴えたのか、その理由がよく分かった。圧倒的な作品だった。

ギャヴィン・フッドツォツィ

幼児に親から離れ愛情に飢え、人間や社会を憎むようになった不良少年の物語。社会的な悪が社会的な悪を生む連鎖に巻き込まれた一人の少年の純粋さが胸を打つ。不変性を持つ問題提起の作品だと思う。

・バーナード・ローズ『パガニーニ

天才の孤独な生涯を悲劇的に描いている。破綻し堕落した生き様をしながらも彼には純粋な心があった。その純粋な心から発する純粋な愛も無残に破壊される。恐ろしいまでに残酷だ。

オーソン・ウェルズ『審判』

不条理な社会の機構に対して敢然と立ち向かうヨーゼフ・K。しかし最後にはダイナマイトで爆破される。これは社会そのもの、組織そのものの寓話となっている。

・アグニエシュカ・ホランド秘密の花園

映像も音楽も物語も素晴らしかった。大人の事情で諸々こじれていた家庭に光が射しこみ、幸せが取り戻される感動のストーリー。

チャン・ロンジー『光にふれる』

トラウマがあったり生活が苦しかったりで夢に向かって一歩踏み出せないピアニストとダンサー。それぞれが影響を与え合いながらその一歩を踏み出していく感動の物語。

・ダニス・タノヴィッチ『鉄くず拾いの物語』

愛する人を救うためにあらゆる手を尽くしていく主人公の熱意が胸を打つ。極めて現実的で感動的だ。BGMが一切ない素材感も好き。

金田敬春琴抄

ものすごく深いストーリー。春琴の姿に観音様を見た佐助は春琴を宗教的に崇拝し、ことごとく尽くしていく。衝撃のラストの後の後日談がまた良い。

・横山善太『幸せな時間』

人生が圧縮された濃密なドキュメンタリー。愛と病と死とが大きなテーマだが、だれもが通過するはずのこのきわめて平凡なドラマが胸を打つ。深かった。