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広田修の書評とエッセイ

李琴峰『独り舞』

 

独り舞

独り舞

 

  ヒロインはレズビアンであり、また性犯罪被害を受けることでうつ病を発症している。また、恋人との別れを繰り返し、心に傷を負っている。優秀な人物であるが、内面には深い闇が広がっていた。

 結局ヒロインは日本での仕事を継続できなくなるのだが、そこにあらわれてくるのは孤独なダンサーのイメージ。ヒロインの孤独はマイノリティであることや心に傷を負っていることから主に形成されている。そしてこの孤独は内面の深みと同義なのかもしれない。心の内面が複雑で深みを形成している人ほど孤独なのかもしれない。

 孤独はよく連帯の対義語のようにとらえられているが、実は単なる連帯の対義語ではないのかもしれない。連帯しつつも孤独であること、それはその人の内面の限りない深さに由来する。そのようなことを考えさせてくれる小説だった。