albatros blog

広田修の書評とエッセイ

CT検査

 7月に人間ドックに行った。結果として、肝臓の値やコレステロールの値が改善していたのはいいのだが、エコー検査で、左腎臓に何かあるかもしれないから精密検査を受けるように言われたのだ。後日届いた検査結果書には「腫瘤の疑い」とあった。「腫瘤」とは癌ではないか。これは怖い。私は同じようにエコーで引っかかった人にいろいろ話を聞いてみた。エコーで引っかかったけど何もなかった人、エコーで引っかかったけど良性だった人。様々だ。だが確か4年前ほど、同僚が同じく検査に引っ掛かり悪性の腫瘍で入院したことがあった。私は腎臓の病気をいろいろと調べ、あれじゃないかこれじゃないかと憶測を重ねた。
 それで8月末になってようやくCT検査を受けた。結果は「異状なし」。結局何もなかったわけである。私は大喜びした。この1か月半ほど私を支配していた心配事がきれいに消えた。
 だが、今回の経験で思ったのは、「私も老いたな」ということだ。いつ癌になってもおかしくない歳になっている。そういえば白髪も増え、やや中年太り気味になり、昔と比べて疲れやすくなっている。少しずつの老いを感じていたところ、今回の「腫瘤の疑い」である。死というものはこういう日常に少しずつ滲み込んでくる。死は老いという形をとって、人を少しずつ侵食する。私はもう結構な程度死に侵食されてしまった。