albatros blog

広田修の書評とエッセイ

2021-04-29から1日間の記事一覧

荻野アンナ『カシス川』

自身の大腸がんの闘病記であると同時に母との関係や母の死をつづった作品でもある。本作品はルポルタージュやノンフィクションではなく、あくまで小説として書かれているので、文章には様々な小説的な仕掛けが施されている。一番の仕掛けはユーモアであろう…

楊逸『流転の魔女』

この作品にはヒロインが二人いて、一人は中国人の留学生であり、もう一人は5千円札を擬人化した「おせんさん」である。中国人留学生の物語は平凡なのであるが、紙幣を擬人化しその視点から世界を記述するというパースペクティブの設定が本書の魅力なのであ…